見える範囲はトイレットペーパーの芯をのぞいたほど。できることは限られている。でも、かつて家族で楽しんだスキーをしたかった。今年1月、4年ぶりにスキー場に足を運んだ。風を切る心地よさを体で感じ、スピード感に心が躍った。今度の冬もチャレンジしたいと思っている。
「目のことを気にせずに、心の底から楽しめたのは久しぶりで、すごいうれしかった」。神奈川県鎌倉市在住の大学3年生、布川詩子さん(20)はそう話す。
じわじわと狭くなる視野
10歳のとき、進行性の目の難病「網膜色素変性症」と診断された。そのときは自覚はなかった。
目のことが気になりだしたのは中学に入ってからだ。英語のミュージカルをする部活動で舞台にあがった。舞台は時々暗くなる。「暗いところが見えない」。最初に表れた症状は暗い場所で見えづらくなる「夜盲」だった。
視野はドーナツ状に欠けていくのが代表的な症状という。じわじわと視野が狭くなり、視力も低下して床に置いてあるごみ箱などにぶつかることが増えた。
「常に病気のことを考えるようになった」という。生活にも少しずつ支障が出始めた。毎年冬、家族で出かけるスキーも病気の進行具合やコロナ禍、大学受験もあり、高校1年生を最後に行かなくなった。
受け入れられない現実
病気に関しては、ずっと受け…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル